第19回 ずっとゲームをしている子、どうしたらいい?!「ゲーム・動画・アニメ・漫画・TVの時間が多いのは、才能を否定されている依存行動の可能性」 〜叱らないで!その短所、お子さんの才能です。〜  文:小鳥遊 樹(たかなし いつき)  イラスト:air(エア)

   

 

 

※こんにちは、小鳥遊 樹(タカナシ イツキ)です。
子どもの造形絵画教室を主宰して24年目になります。
これはお母さん達の子育ての悩みを、
会話形式で説明・解決していく子育てコラムです。
文中のエピソードや登場人物は、
筆者の経験を元に、個人情報がわからないように変えてあります。
あらかじめご了承ください。

 

 

 

【お母さまの子育てのお悩み】

?:「どうしてうちの子ってゲームばっかりしているのかしら?
学校から帰って来れば、おやつもそこそこに部屋に閉じこもってゲーム。
休みの日なんて、ご飯以外は朝から晩までゲームよ。
お友達が遊びに来ても、遊びに行ってもやっぱりゲームをしているみたい。
目も悪くなるし、やめなさいと言うのだけれど聞く耳を持たないのよ。
宿題もちっとも進まなくて、毎日叱りきれないわ。」

 

T:「待って待って、叱らないで!
その短所、お子さんの才能が否定されているサインですよ。」

 

?:「あらイツキちゃん。
うちの子は否定する才能もないわよ。
来る日も来る日もゲームばっかり。
自慢できることや得意なことなんて何もないし。
テストの点や成績なんて恥ずかしくて言えないわ。

 

怒って無理やり取り上げたら、今度は動画と漫画よ。
おまけに動画と漫画を禁止したら、
ゴロゴロ寝ているかボーッとテレビを見ているの。
ホントに頭にきちゃう。

 

勉強や家の手伝いじゃなければなんでもいいのよ。
単純に楽なことだけしていたいの。
努力することができないダメな子なのよ。
将来が心配だわ。」

 

 

【どうして子どもはゲームにハマるのか?】

 

T:「どうしてゲームばっかりしているのか?と、
考えたことってありますか?」

 

?:「楽しいからに決まっているじゃない。」

 

T:「そうですよね。
どうして楽しいんだと思いますか?」

 

?:「クリアできると嬉しいから。とかそういうこと?」

 

T:「クリアできるとやった!って、思いますよね。
脳からはご褒美ホルモンが出て、達成感で気分が良くなるとも聞いています。
辛いことが多い世の中で、気分が良くなることって大切じゃないですか。
私たち大人だって“自分にご褒美”を欲しいですよね?
他にはどうですか?」

 

?:「お友達と共通の話題が話せるから。
俺以外みんな持っているとかいうから。
それで買うことにしたのよ。
失敗だったわ〜。
持たせたことも後悔しているの。
親の責任よね。」

T:「子どもにとって、盛り上がれる共通の話題って大切ですよね。
友達の輪の中で一人だけ話題についていかれなかったら、
悲しいのは理解できるでしょう?
ゲームを持つことが罪なのではないと思うのです。
友達同士で語る共通の話題って、大人にとっても大切じゃないですか。
まだありますか?」

 

?:「頑張れば一番になれて、自慢できるから。
みんなすご〜い!って、言ってくれるんだって。
だから競争でつい頑張っちゃうんだけど。
そのうち寝る時間も削って、
朝も起きるとすぐ始めるようになったの。
声をかけても集中していて無反応だし、
お手上げなのよ。」

 

T:「そうなんです。
頑張れば誰でも一番になれる可能性があるんですよ?
それでみんなに褒めてもらえるんです。
こんな良いことってないじゃないですか。
そりゃ、ゲームが楽しいに決まっていますよね。」

 

?:「ちょっとイツキちゃん、なにを言っているの?
私はそれだと困るっていう話をしているのよ。
頑張るんだったら、どうして勉強で頑張ろうとしないのかしら?
ゲームで勝てたところで将来の役に立つわけじゃないのに。」

 

T:「お母さんの悩みって、
どうしてうちの子ってゲームばっかりしているの?でしたよね。
それに対する分析が素晴らしいです。」

 

?:「こればっかりは、褒められても嬉しくないわ。
それだとやらなきゃいけないことが出来ないでしょう?
ゲームに没頭するようになってから、余計に無口になって成績も下がって。
生活だってめちゃくちゃだし、寝不足でイライラしているし。
やることをきちんとやって、
勉強もしっかりできるなら口うるさく言いたくないけど。」

 

【他のものから逃げたい気持ちの表れ】

 

T:「問題はそこですよね。
ゲーム機を置いたらやりたい事じゃなくて、
やらなきゃいけないことが待っているんです。
考えたくないことも考えなきゃいけなくなるでしょう?」

 

?:「そんなの当たり前じゃない。
誰だって、やりたくない事でも我慢してやっているのよ。」

 

T:「お母さんも覚えがありませんか?
テストの前になると引き出しの整理を始めちゃうとか、
漫画の1巻から読み始めちゃうとか。
お掃除や片付けをしなければと思うと、
出かけなければいけない用事を思い出すとか。」

 

?:「私だって勉強はそんなに得意じゃなかったから、
すぐにテスト勉強を始めなかったこともあるわよ。
でも、今のうちの子ほど酷くはなかった。
あれじゃあ、まるで中毒だわ。」

 

T:「その通り。
中毒なのですよ、依存症。
やりたくない事を無理にやらなければいけないとなると、
心がバランスを取ろうと思うのです。
アルコールやタバコも、気分を紛らわせるためですよね。
ゲームも同じなのです。

 

やらなければいけないと言う意識があるから反対に逃げてしまう。
嫌だなと思うことを考えるのも辛いし、説教されるのも面倒くさいと思う。
だから楽しいことを探そうとするのです。
“やらなければいけないことを先にやってから” という、
理性でコントロールすることができないのからなのですよ。

 

困った・どうしよう・やりたくない。
でもやらなきゃいけない、やらないと怒られる。
テストの点数が悪くても叱られる、焦っちゃう。
とりあえずゲームをして気分を良くしようという感情に支配されるのです。

 

それが繰り返されると、
もう目を覆いたくなるような負のスパイラルにはまってしまいます。
ゲームの経験値は上がる一方で、現実の世界では何も前に進んでいなくて、
どんどん取り残されていく感じがするからです。
ヘッドフォンで耳を塞いで好きな音楽だけ聞いている、そんな感じです。
嫌なことを考えなくて済むから。」

 

 

 

?:「それじゃあ私の望みと真逆だわ。
どうしてそんな極端なことになっちゃうの?」

 

【欲求不満や劣等感を解消してくれるデジタルの世界】

 

 

T:「先ほどお母さんも教えてくださいましたが、
それほどゲームが魅力的だということは大きいと思います。
最新の音と映像で魅力的なキャラクターが友達になって、
夢と冒険とファンタジーの世界に連れて行ってくれるんです。
お金や時間さえかければ、戦っても勝てるのが決まっているのです。
お金も時間もかけて勝てないと面白く無いからだんだん減ると思うのですが、
人は“やった!”とか“イイね♡”とかが嬉しい生き物なのです。」

 

?:「うん、私もSNSで“いいね”がもらえるとテンションが上がる。」

 

T:「ゲームの中では、自分の好きな部屋や家や街が作れるのですよ。
中には友達同士でチームを組んで戦えるものもあります。
やればやるほど、レアなものが手に入るんです。
楽しいイベントも盛りだくさん。
しかもお金が必要なものもありますが、
無料で長時間遊べるものたくさんあります。
友達とも攻略法で盛り上がれます。
ゲームを通して知らない人とも友達になれるんです。
こんな面白いことに勝てる現実の世界のことって、何か他にありますか?」

 

?:「あのね、イツキちゃん。
私を説得してどうするの?
私はうちの子にゲームをやめさせたいという話をしているのよ?」

 

T:「お母さんってゲームを全然しないんですか?」

 

?:「そんなことないわよ。
子どもに教えてもらって、携帯のゲームはするの。
だから夢中になる気持ちはわかるのよ。
ついつい買い物に行く時間を忘れることもあるもの。
だけど、程度ってものがあるでしょう?
何事もバランスだと思うの。」

 

T:「お母さん、良いこと言いますね。
その通りです。
このお悩みの肝です。
バランスをとるための、もう片方のものがないんです。」

 

?:「だから、それは“やらなきゃいけないこと”でしょう?」

 

T:「違います。
バランスを取るものは、
“自分が選んでやりたい現実のこと”です。
“自分のプライドを保てる喜びになるもの”です。
“笑顔でいられてワクワクできるもの”なのです。
それが見つからない子が依存的になりやすいの。
ゲームは誰でも頑張れば褒めてもらえて、クリアできる喜びになるから。」

 

?:「じゃあ勉強が得意じゃないうちの子は、
ずっとゲームをしているしか仕方がないってこと?」

 

T:「この悩みって、相談件数で言ったら多分一番だと思うのです。
みんなが困っていることの一位。
親御さんも悩んでいるけど、
お子さん自身もやらなければいけないことがあるのを分かっているのです。
それでもやめられないことにストレスを感じていたりもします。
でもどんなに話し合っても、ルールや罰則を作っても解決しようのないこと。
またズルズルなし崩しに始まっちゃうでしょう?」

 

?:「確かにそうなのよ。
本当にあの手この手でいろいろしてみるんだけど効果がないの。
いつの間にか、また別の機種やソフトにハマっているのよ。
そう考えると恐ろしいわね。」

 

T:「みなさんからのご相談が一番多いお悩みなのに、
後に持ってきたのには理由があります。
この問題を解決できる方法って、
ゲームやゲームにハマる子を悪者にすることではないのです。
勉強を無理矢理やらせることでもありません。
第1回から15回までにお伝えした才能の芽を育てて、
ゲームをしたい気持ちをコントロールできる、
理性や幸福感を作っていくことだからです。

 

“勉強が得意じゃないうちの子は”とおっしゃいましたが、
ゲームか勉強の2択しかないことがそもそもの問題なのです。」

 

 

?:「本人のやりたいことを大切にするっていう話でしょう?
私だってそのくらいのことはちゃんと聞いてあげているわよ。
なんでもやりたいことをやりなさいと話している。
精一杯応援してあげるからと言っている。
でも、やりたいことはゲームだっていうんだもの。
“ゲームを作る人になるか、ゲームで稼ぐから良い。”だって。
ホントうちの子どうしようもないでしょう?」

 

【子どもには、自分の才能の芽を見つけて育てることは難しい】

 

 

T:「そんなことはありません。
お子さんの中で区別がつかないだけなんです。
子どもって自分を生かすことのできる選択肢を知らないから。

 

自分が無意識にする様々な才能の芽の行動の失敗は、
否定され叱られるでしょう?
だから自分の得意が育てられない。
いろいろ試す機会がないだけなのです。

 

“笑顔でワクワクできること”と先ほど言いましたが、
それは人間のやり甲斐や生き甲斐なのです。
自分が何をすれば心から幸せで、
達成感があり人にも喜んでもらえるか?
子どもには見つけようがないだけなんです。

 

現実の世界で夢中になれて人から褒められて、
周りの人も幸せにできることが見つかれば、
ゲームに依存しなくても大丈夫なのです。」

 

?:「ちょっと分かりにくいわ。
もう少し具体的に話してもらえない?」

 

T:「はい、経験談からお話させて頂きます。

 

ゲームは娘の世代でも子どもたちが小さい頃から夢中になってやっていました。
当時、可愛らしい怪物のキャラクターのゲームソフトが爆発的に売れたのです。
ゲームはあっという間に家庭に広がりました。
私も娘に教えてもらいながら、
森の中に自分のお家を作るゲームに夢中になりました。
部屋の中を充実させるために釣りや果物収穫のお仕事をするのです。
明け方にしか捕まえられないお魚が高く売れるので、
朝食やお弁当を作りながら待って捕まえたりしていました。
朝起きてきた娘に喜んで見せたら呆れられましたけど。

 

ネットで相手と対戦するトランプやオセロやチェスなどにもハマりました。
特にパ○ドラは中高校生の男の子たちに人気の高いゲームで、
得点が高くなると生徒たちが褒めてくれるのです。
今まで盛り上がって話をしたことが無かった子とも、
親しくなることができました。

 

指導者であり自営業であったために、
なかなか褒められることの少なかった私にはすごい快感でした。
スッゲーって言ってもらえる嬉しさってなかなかのものです。
全く違う世代の子達と共通の話題で盛り上がれることも本当に嬉しかったです。
一時期、学校に行かない立場であるのを良いことに、
朝から晩までやっていたこともあります。

 

ある朝のことです。
起き上がった瞬間にゲームのオープニングの曲が頭の中で流れたのです。
“中毒になっている”そう思いました。
その頃、子どもと話していてもつい携帯に手を伸ばしてしまい、
よく娘に怒られていました。

 

トランプの大富豪やオセロもずっとやっていると、
毎晩来る人たちと仲間になって親しく話すようになりました。
みんな仕事を終えてから参戦するのでお互いに健康に気遣ったり、
全国の人と気候の話や郷土の話で盛り上がれるのも魅力でした。
ついつい明け方までやることが多くなり、
起きてきた娘を学校に見送って入れ違いで眠るようになったのです。
そうなってからやっと気が付きました。“中毒だ”と。」

 

?:「ほんとだ。なんかうちの子の話を聞いているみたい。」

 

T:「もともと多動性なのですぐに飽きはするのですが、
興味を持ったものには子どもみたいに気が済むまで一直線です。
携帯やネットゲームはそんな好奇心を次々と満たしてくれる
飽きのこないキラキラとした場所でした。
何でも知りたい欲を満たしてくれるという意味でもネットは素晴らしく、
好奇心の塊である子どもが興味を持たないわけはないのです。

 

住宅ローンや教育費の積み立てを抱えている身で、
昼夜時間を気にせずに無料でできることも大きな魅力だったのです。
育児をしていれば全然違う世界の人と話すこともなかったので刺激的でした。

 

一方、娘は夕方から夜まで仕事をする私が送り迎えを出来ないので、
小学3年生から携帯を持ち一人でバスに乗って習い事に行っていたのです。
けれど携帯そのものに興味を持つということはありませんでした。
性格の問題も大きいと思いますが、
たくさんの習い事で多忙だった彼女に、携帯で遊ぶ時間はなかったのです。

 

彼女は今でも携帯は連絡を取るものであって、
貴重な時間を潰すものではないと言います。
気になる事があるとつい見てしまうからと受験期は不携帯にしていたほどです。
テレビのコンセントも自分で抜いていました。

 

そのうちに周囲でもゲームをしてばかりいて困るという
お悩み相談が舞い込むようになりました。
よくよく状況を見ていると、
私や娘のようにハマる子とハマらない子がいるのです。」

 

?:「イツキちゃんはハマる子だったのね。」

 

【リアルの世界で、勉強以外に夢中になれるものを探し出す】

 

T:「運動や勉強など現実世界で自分の好きなことを思い切り出来て忙しい子は、
ゲームにハマっている時間は物理的にありません。
全くしない訳ではないけれど、気分転換程度で充分満ち足りるのです。

 

自分の言葉で話せて自分の頭で考えることができている子も、
やり甲斐や生き甲斐を優先させるのです。
ゲームよりも、何が大切で人生に有効かが理解できていました。

 

“ゲームに勝てたって人生の役に立つわけじゃないのに。”
お母様はそうおっしゃいましたが、
まさにそれを理解してコントロールしている感じでした。
その理解に、周囲の評価がついてプライドが保て依存しなくて済むのだなと。

 

子どもだけでなく大人でも一緒ですよね。
大人も自分を評価してもらえるものがなくてストレスがたまると、
何かに依存したくなるものです。
ゲームだけでなく他の依存も同じ構造ですね。
憂さ晴らしをせずにはいられない精神状態という事です。」

 

?:「確かに。
パパも会社で嫌なことがあると怪しげな動画を見る時間が増えるわ。
私もお金がないと思うと、通販でつい注文しちゃったりするの。
あれって不思議よね。」

 

T:「私も使えるお金や時間や行動に制限のある育児をしているうちは、
そうしたゲームやSNSなどのネットの世界の交流が心の拠り所だったのです。
子どもが巣立って、
真剣に夢を追いかけ始めた今はとてもそんな暇がありません。

 

ゲームやSNSのアプリも重くなるので削除してしまいました。
あれほど大切な世界だったのにも関わらず。
リアルな世界でのやり甲斐は強いのだと思いました。
だからお母さんのお悩みが、お子さんの立場で痛いほど理解できるのです。」

 

?:「なるほど、イツキちゃんの子ども目線は説得力があるわね。
なんか、娘さんが苦労していそう。」

 

T:「“誰だってやりたくないことを我慢してやっている”と、
お母さんは仰いましたが本当にそうでしょうか?」

 

?:「ゲームをする時間をコントロールできる子は、
勉強が好きだから我慢しているわけではないってこと?」

 

T:「必ずしも好きではないかもしれない。
でも必要性を理解しているか、喜びになっている。
そのどれかではないかと思います。」

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?:「自分の頭で考えて納得してゲームから離れなければ、
怒って無理やりやめさせても意味はないって事なのね。」

 

T:「なかなか手がつけられないない子は、
勉強が理解できないし面白くないのです。
頑張ろうとしても分からないし、頭が拒否をする。
面白かったらやるに決まっているじゃないですか。
テストの点が取れれば先生にも友達にも大好きなお母さんにも、
“凄い!”ってほめてもらえるんですよ。
こんな気分の良いことってなかなか無いわけです。

 

勉強をやろうとしない子は、
やっても出来ないし負けるのが分かっているのです。
結果が出れば、満足できる結果では無いのを知っているのに、
それでも“やらなきゃダメでしょ”と言われたら苦しくないですか?」

 

?:「そんなの努力しない事の言い訳じゃない。」

 

T:「努力すれば誰でも同じ点数になれると思いますか?」

 

?:「少なくともうちの子は、やらせればできるのにやらないのよ。」

 

T:「やらせれば出来るのにやらないのは、
それがその子にとってのいっぱいいっぱいだからです。
自分の頭の許容範囲を超えると拒絶するのです。

 

もう出来ないのに、“やればできるはずだ、なぜやらない?”と叱られる。
楽になりたいからゲームに夢中になる。
ゲームをしていると余計に叱られる。
この繰り返しです。」

 

?:「なるほど。
やればできるのにやらないのは、本当にそれ以上できないからなのか。」

 

【才能を否定されるが故の依存行動を叱ってしまうと…】

 

T:「そんな状況でゲームだけが楽しい場所に連れて行ってくれているのに、
最後の砦さえも崩そうと、叱るとどうなるか分かりますか?」

 

?:「もしかして余計にゲームの中に逃げ込むってこと?」

 

T:「そうです。
ダメだと分かっていながら、どんどん依存してしまう悪循環になります。
ダメだと分かっていても、子どもにはどうすることも出来ません。
ゲームから一歩外に出れば嫌なことしかない訳ですから。

 

それを無理矢理やめさせようとしたらどうなるでしょう?」

 

?:「…うちは怒鳴られた。うるさい!って。
今は何を言っても無反応だけど。
お友達のお母さんは、壁に穴をあけられたって泣いていた。」

 

T:「コミュニケーションが取れていない状態で心の拠り所を取り上げたら、
拒絶反応を示すか親の存在を心から消すくらいしか選択肢がありません。」

 

?:「そんなこと言われてもどうすればいいの?
私は取り返しのつかないことをしちゃったのね。」

 

T:「お子さんを笑顔にするにはどうすれば良いか、
考えてあげてもらえませんか?
我慢して嫌なことをやるために生まれてきたのではなく、
好きなことで努力をして、笑顔で幸せを感じるために生きているのですから。

 

どうせ否定されるだけだし、わかってもらえない。
そんな風に現実世界のコミュニケーションを諦めてしまっている子どもの心を、
取り戻すのには時間がかかると思います。
怒られた分だけ、傷つかないために感情の鎧が厚くなっていますから。

 

それでも取り返しのつかないことではないのです。
なぜなら、子どもたちの心には愛や志が最初からあるから。
だから自分の気持ちを分かってくれる人には心を開くのです。」

 

?:「子どもの気持ちを分かってくれる人を探しなさいってこと?」

 

T:「いえいえ、お母さんがなってあげてください。
せっかくこの世で縁があって親子になったのだし。」

 

?:「自信ないなぁ。
具体的にはどうすればいいの?」

 

T:「まず謝ってみて。
自分が理解不足であなたに嫌な思いをさせたことがたくさんあるの。
ごめんねって。」

 

?:「えー!謝るんですか?
こっちは悪いことをしていないのに?」

 

T:「辛い思いはさせたんじゃないでしょうか?
“うちの子ってダメな子”という言葉って、ご自身が言われたらどうですか?
心で思っているだけで、
本人がその場にいなくてもお子さんには伝わるんですよ。」

 

?:「もしかしてイツキちゃんも、
他のことでいっぱい叱ったことは娘さんに謝った?」

 

T:「はい、もう平謝りです。
未だにあの頃のことは思い出したくないって娘に言われますから。
その度に“すみません”、“失礼しました”と手を合わせます。
彼女は笑っていますけど、ホントに申し訳ないことをいっぱいしました。」

 

?:「そうなのかぁ。
抵抗あるけど試してみようかな。」

 

【子どもに産んでくれと頼まれたわけではない】

 

T:「支配するという立場を離れて、
愛しているという立ち位置でなければ、お子さんは耳を貸さないと思います。」

 

?:「え、でも実際にお金をだして育てているのは親だし。
私なんか自分は美容院も新しい洋服も我慢しているのに、
子どもにはすごく高いゲーム機買ってあげるのよ。
これで感謝もされなければ、謝らなきゃいけないなんておかしい。
なんか泣きたくなってきた。」

 

T:「お子さんに産んで下さいって頼まれた訳じゃないでしょう?
自分で育ててみたいって思って産んだのですよね。」

 

?:「それはそうだけど。
そっかぁ、確かに。
いつの間にか子どもに苦労させられている気になっていた。
育ててあげているような気がしていた。
間違っていますね。」

 

T:「でもお気持ちはよく分かります。
私もそうでしたから。
想定外のことばかり起こると、どうして?なぜ?と思いますよね。
親だって親をするのは初めてですから。
状況を良くしようと、一生懸命子どもを叱る親御さんほど苦しくなります。」

 

?:「どうしてこんなことになっちゃったのかなぁ。
コントロールできる理性が子どもにあるのか見極めて渡すのって
難しいことですよね。」

 

T:「はい、すごく難しいことだと思います。
愛情をお金に変えて手渡してしまうと起こりやすいことです。
忙しいから、家庭で会話をするコミュニケーションの代わりにゲーム機を。
疲れているから、独り立ちするための経験値を与える代わりにゲーム機を。
公共の場所で静かにしていて欲しいからゲーム機を。
留守番をさせるときに安心安全だからゲーム機を。
自分のやりたいことに集中したいからゲーム機を。
そうしていたら、後々中毒になっても子どもを責められません。」

 

?:「忙しかったり疲れていたりするのは、子どもの塾代を稼ぐためなのよ。
教育費の積立だってしなくちゃならないからパートを掛け持ちしているのよ。
家にいない間、安全に過ごしてもらおうと思ったらゲームが一番なのよ。
他のものでいたずらをしたりしないから。」

 

T:「そうこうするうちに、子どもはどんどんゲームにハマっていきます。
ハマる時間が長くなるということは勉強もしないし運動不足にもなるのです。
子どもは大人が思っているほどバカではありません。
ゲームで勝っても、現実の世界で役に立つことは少ないことも知っています。
勉強や運動ができるより褒められることではないなというのは分かるのです。
でも現実の世界で夢中になり勝てることがないと他にしようがないのです。
そうしながらも心は傷つくんです。」

 

?:「だからこそ、その世界に閉じこもるのか。」

 

T:「親思いの子ほどそうなります。
自分は親の期待に応えてあげられていないな。という思いは、
大人の想像以上に子どもにとって辛いことなのです。
親は子どものために一生懸命働いているのも知っています。
プライドが高くて周囲に勝てない自分に劣等感を持つ子も、
持って行き場の無い感情にイライラし余計に依存するのです。」

 

?:「親は全然嬉しく無いのに、そういうものなんですね。」

 

T:「成績が悪いとか、
先生やお友達との関係がうまくいかないなどの悩みを持つときもそうですね。
親御さんが仕事で忙しくて寂しい場合などもゲームの世界に入りやすいです。
自分の気持ちを慰めてくれるものだから。

 

自分の中にある違和感や焦燥感を昇華できない時もそうなります。
説明できない感覚をどうしたら良いか、子どもには分からないので。
自分を輝かせる方法を知っていて、
精神的に安定している子は依存には走りません。

 

勉強以外で自分の才能を伸ばしたい子は、他のことがしたいのです。
でも、別のことをしようとすれば
“そんな余計なことしていないで、勉強しなさい”って言われるでしょう?
つまり才能の芽が否定されているから依存に走るのです。」

 

?:「勉強や嫌なことからの逃避行動。
好奇心を満たすための行動。
ストレスを解消する為の行動。
その全てにゲームが有効だとしたら、禁じるのは無理がありますよね。」

 

T:「しかも手を伸ばせば無料でいつもそこにあるんです。
本当に難しい事だと思います。
だからその世界を知るまでに何をお子さんに伝えておくかも重要なのです。

 

ゲームを手渡すまでに、
どれだけの理性や価値観が育っているかが問題なのだと思っています。」

 

?:「理性や価値観が出来てから渡すなんて、非現実的じゃないですか?」

 

T:「ホントにそうですね。
同じ中毒でもアルコールは理性が出来てから知ることが可能です。
体に分かりやすい反応が出ますし、手の届かない場所にあるからです。
値段もお小遣いで買えていつも置いておけるようなものではありません。

 

欲を煽るようなネット動画やゲームはいつの間にか生活に入り込んでいます。
見た目には精神状態や生活がどうなっているのか分かりにくいです。
無料で常に携帯することが可能です。

 

子ども達の健やかな成長に障害がないように、
そこから守るのは並大抵ではないと思います。

 

だからこそ小さいうちからコミュニケーション力と理性を一生懸命育て、
愛情を知らせ、自分には輝ける才能があることを知らせるのが重要なのです。」

 

?:「ゲーム、恐るべしですね。」

 

【ゲームを悪者にしても何も解決しない】

 

T:「使い方によって非常に怖いです。
犯罪に結びつくこともあります。
一方で、先ほど挙げたように魅力的な部分がたくさんあるのです。」

 

?:「イツキちゃんの話を聞いていると、
ゲームが悪者じゃないっていう気がしてきました。
すごくいろんな役割を果たしていますものね。
時代の流れには逆らえないしね。」

 

T:「そうですね、ゲームは悪者ではないんです。
ただゲームをする時間に失われるものはたくさんあります。
例えば、
友達や家族と会話する時間(コミュニケーション力)
周囲の景色や人を見る時間(観察力)
家のお手伝いや生活の仕方を覚える時間(人間力)
知識を吸収する時間(知識力)
ものを考える時間(思考力)などです。

 

何よりも怖いのは、自分の頭で判断する時間が減るので、
深く物事を考えない短絡的な人間になってしまうことです。
それは感情で表現するキレるスイッチが入りやすいことでもあります。
リアルな生活の中で愛情を受け取る時間が減ります。
愛を人に与える方法を育てられないということにもなります。

 

ゲームのやり過ぎで目のトラブルを抱え、
のめり込むあまりに日常生活が送れなくなったりもします。
運動不足になりますし、規則正し生活も送れなくなります。
肩こりや頭痛、肥満の原因にもなりますね。
寝る前にやると興奮しますから不眠の原因にもなります。

 

脳は記憶をしますから、他のことをしていても脳裏に浮かびます。
音と映像、光で強い記憶に残りますから。
殺人、戦闘ゲーム、性的に煽るゲームもたくさんあります。
そんなことを長時間続けていて、精神的にいい影響を与える訳がありません。
対戦ゲームを通してネットの向こうの知らない人に繋がって、
騙されたり脅かされたりする可能性もあります。
だからリスクもいっぱいあります。」

 

?:「膝の力が向けて行きそうです。
そんなにたくさんのリスクがあって、
身につけなければいけない事のチャンスを失っているんですね。」

 

T:「そうとも言えますが、有り余る時間があっても、
伝える努力を大人がしなかったら一緒ですよ。
一緒に経験しコミュニケーションをとる環境を作らなければ、
時間を持て余した子どもは現実逃避できる依存系のものに走りますから。」

 

?:「なるほど問題はゲームではなく、
愛情や理性を育てることだと仰っていましたね。
子どもの資質にあったやり甲斐や生きがいをどう見つけるかと、
何を子どもに教えるかという家庭の教育方針なんですね。」

【お母さま達へのエール】

T:「ゲームにハマってしまったお子さんの親御さんは大変です。
けれどコントロールできる理性を養えば、
ゲームは気分転換やリラックスに使えて良い効果も生みます。

 

最近はゲームで学力を向上できるアプリもたくさんありますね。
無料のものもあります。
学研の無料アプリなどはとても楽しく学力が向上できて、
私も生徒さんたちに度々紹介をさせてもらいました。

 

他にも動体視力が鍛えられ、直感力が養われる。
2次元の世界で勝敗をつけるルールを作れば、直接的な争いの回避にもなる。
“eスポーツ”として競技人口も1億人を突破して、
オリンピックの競技種目の候補に挙げられる時代です。
ゲームの大会でも多額の賞金を手にするプロゲーマーたちが実際にいるのです。
やみくもに“ゲームだからダメ”では、時代の流れとして説得力に欠けます。

 

今を生きる子どもは、私たちのいない時代を生きる人間です。
私たちの生きてきた価値観では判断しきれないこともたくさんあります。
私はかなり年をとるまで、
自分の親の価値基準で人生を選んでのちのち後悔しました。

 

親は親でそれが選択し得る最高の愛情だと思ってのことです。
けれど娘にはそうなって欲しくない。
自分の直感力で自由に人生を旅して欲しいと思っています。
例えそれが失敗の連続であったとしても。

 

ゲームを悪者にして禁止するのではなく、
ゲームをしたい欲をコントロールする理性を育てることなのです。
理性を育てるためには本人の行動を頭ごなしに叱ることなく、
やりたいことや資質にあっていることを見極め応援することです。
それは親にとって時間や手間のかかることなのです。」

 

?:「なんか自分には無理な気がしてきました。」

 

T:「いきなり理性を育てろとか言われても困りますよね。
まずは簡単なところから始めてみてください。

1・とりあえず謝る

2・今まで怒ってきた事が才能の芽であったと伝える

3・3次元の世界で楽しめることを少しずつ一緒にしてみる
(例えば料理とか洗濯とか旅とか会話とか)

4・叱らない、怒らないを徹底する

5・独り立ちしてから生活で必要な知識を教えさせてと頼んで一緒にしてみる

 

世の中には、ゲームと勉強以外にもできることがたくさんあって、
やり甲斐や生きがいはいろんなところに溢れていると教えてあげて欲しいの。
やりたいことは自分自身に問いかければ教えてもらえることも伝えてあげて。

 

一度中毒になると、現実世界に戻すのには時間がかかります。
けれどいずれ一人で生きていく子どもには何を覚えさせ考えることが必要か、
愛情を持って一つ一つ教えてあげて欲しいのです。」

 

?:「なるほど!よく分かりました。
なかなか難しいことで上手くできるか分かりませんが、
そこからなら始められそうです。
まずは今まで叱ってごめんね。と、子どもに謝ってみます。
イツキちゃんありがとう!」

 

T:「こちらこそ!
長い時間、話を聞いて下さってありがとうございます。
ぜひ親御さんの愛情で、
ゲームを理性でコントロールして扱える家庭を作ってみてください。
そしてお子さんとともに限られた時間を楽しくご一緒に過ごして下さいね。」

 

〜叱らないで!その短所、お子さんの才能です〜
19回「ゲーム・動画・アニメ・漫画・TVの時間が多いのは、
才能の芽を否定されている依存行動の可能性」を、
最後までお読み頂きありがとうございます!
難しい問題なので少し長くなってしまいました。

いつでもゲームをしたり、動画を見たりしているお子さん。
時間のケジメをつけて優先順位が分かる子になるようにと、
今まで一生懸命に叱ってきたお母様。

 

やりたいことしかやらないダメな子と思っても、
叱らない方が良い訳をお分かり頂けたでしょうか?

 

このコラムでは叱らなければいけないと思っている短所の多くが、
どんな才能に成長するかをお話しさせていただきます。
次回は学校の勉強が嫌いなお子さんの才能です。

 

ついついイラついたりムカついたりして怒ってしまうような、
お子さんの問題行動や直らない癖。
そんな短所に困っているお母様は、
「これってどんな才能なの?」と、質問してくださると嬉しいです。
出来るだけ状況を詳しくお書きくださいね。

作者:小鳥遊 樹さん

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本記事は個人的体験談などに基づいて作成されており、脚色なども加えられている場合もあり、必ずしも各読者の状況にあてはまるとは限りません。この記事の情報を用いて行動される場合、ご自身の責任と判断により対応いただけますようお願い致します。尚、記事に不適切な内容が含まれている場合はこちらからご連絡ください。

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